急ぎの用件をメールで送るとき、結びに「取り急ぎご連絡まで」と書いてよいか迷うことがあります。
結論から言うと、「取り急ぎご連絡まで」は日本語として誤りではありません。ただし文末を「まで」で止めた簡略な結びなので、同僚や気心の知れた相手には問題なく使えますが、取引先や目上の人には「取り急ぎご連絡申し上げます」「まずはご連絡申し上げます」のほうが無難です。
この記事では、次の4点をまとめました。
- 「取り急ぎ」の意味と、失礼と言われる理由
- 相手・場面ごとの判断表(おすすめ度と言い換え)
- 迷ったときに3つの質問で決める方法
- 社内向け・社外向けのメール例文と、「なぜその表現なのか」
先に要点を表にすると、次の通りです。
| 相手 | 「取り急ぎご連絡まで」 | 代わりに使う表現 |
|---|---|---|
| 同僚・後輩・親しい社内の相手 | ○ 使ってよい | ー |
| 上司・先輩 | △ 丁寧な形なら可 | 取り急ぎご連絡申し上げます/取り急ぎご報告いたします |
| 取引先・お客様・初めての相手 | × 避けたほうが無難 | まずはご連絡申し上げます |
| お礼・お詫びのメール | △ 重要な場面では避ける | まずはメールにてお礼申し上げます |
表の「×」は文法的な誤りという意味ではなく、「その相手・場面では簡略に感じられやすいので、別の表現が無難」という意味です。
「取り急ぎ」の意味

「取り急ぎ」は「とりあえず急いで」「ひとまず急いで」という意味の言葉です。辞書では「『いそぎ』を強めていう語。手紙文に用いる」と説明され、「取り急ぎ一筆申し上げます」という用例が載っています。
出典:取急ぎ(トリイソギ)とは? 意味や使い方 – コトバンク(デジタル大辞泉)
出典:「取り急ぎ」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
つまり「取り急ぎご連絡まで」は、「詳しいことは後回しにして、まず用件だけ急いでお知らせします」という意味です。手紙文で昔から使われてきた言葉であり、それ自体が失礼な表現ではありません。
ビジネスメールでは、詳細を省いて第一報を送る場面で使うことが多いので、その場合は後から補足の連絡をするのが自然です。用件がその一通で完結しているなら、補足は不要です。
「取り急ぎご連絡まで」が失礼と言われる2つの理由
1. 「まで」で止めた簡略な言い方だから
「取り急ぎご連絡まで」は、文末を「まで」で終える簡略な結びです。この書き方自体は間違いではありませんが、「申し上げます」まで書いた形に比べると簡略な言い方なので、目上の人にはそっけなく感じられる場合があります。
2. 「急ぎのため、要点だけ伝える」という意味だから
「取り急ぎ」は「急ぎのため、まず要点のみ伝えます」という意味です。この点は中立的な断りの言葉なのですが、相手によっては「自分への連絡は簡単に済まされた」という印象になることがあります。
まとめると、「取り急ぎ」が失礼なのではなく、簡略な結びなので、相手と場面によって丁寧な表現に置き換えるのが正しい考え方です。
相手・場面別の判断表
| 場面 | おすすめ度 | 後日の補足連絡 | おすすめの表現 |
|---|---|---|---|
| 同僚への「資料受け取りました」「その方向で進めてください」 | ◎ | 不要 | 取り急ぎご連絡まで |
| 社内の上司への障害・トラブルの第一報 | ○ | 必要 | 取り急ぎご報告いたします |
| 親しい取引先への受領連絡 | ○ | 不要 | 取り急ぎご連絡申し上げます |
| 初めての取引先・お客様への第一報 | △ | 必要 | まずはご連絡申し上げます |
| 上司・取引先への正式な報告・回答 | × | ー | 用件を完結させ、「取り急ぎ」は付けない |
| 見積金額・契約内容などの正式な通知 | × | ー | 正式にご連絡申し上げます |
| 重要なお礼・正式なお詫び | × | ー | まずはメールにてお礼(お詫び)申し上げます |
| 急ぎではない連絡 | × | ー | ご確認をお願いいたします |
正式な通知に「取り急ぎ」を付けない理由は、情報を省略している印象を避け、用件を明確に完結させるためです。急ぎではない連絡に付けると、「何を急いでいるのか」が伝わらず不自然に見えます。
迷ったときの3秒判断

表を見る余裕がないときは、次の3つの質問で決められます。
- 本当に急ぎか? → いいえなら「取り急ぎ」は使わない
- 第一報として、詳細を後から送るメールか? → はいなら「取り急ぎ」が使える。いいえでも、受領連絡など短い用件がその一通で完結しているなら使える。正式な回答・通知なら使わず、用件を完結させる
- 相手は目上・社外か? → はいなら「取り急ぎご連絡申し上げます」か「まずはご連絡申し上げます」。いいえ(同僚・親しい社内の相手)なら「取り急ぎご連絡まで」で可
まとめると、「急ぎの第一報か、短い用件の連絡」で、「目上・社外なら丁寧な形、社内・親しい相手なら簡略な形も可」です。この2点だけ覚えておくと迷いません。
目上の人・取引先への言い換え表現
| 言い換え表現 | 丁寧さ | 使う場面 |
|---|---|---|
| 取り急ぎご連絡申し上げます/取り急ぎご報告いたします | 丁寧 | 上司・先輩への第一報。省略しない形 |
| まずはご連絡申し上げます/まずはご報告申し上げます | 丁寧 | 取引先・お客様への第一報。急いだ印象が弱く、使いやすい |
| 詳細は改めてご連絡いたします | 丁寧 | 後で詳しく連絡することをはっきり伝えたいとき |
| 取り急ぎ用件のみにて失礼いたします | 丁寧 | 用件だけの短いメールを送ることを断りたいとき |
| 略儀ながらメールにてご連絡申し上げます | かなり改まった表現 | 本来は電話や対面で伝えるべき内容をメールで済ませるとき。通常の取引連絡なら「まずはメールにてご連絡申し上げます」で十分 |
「まずは」は「最初にこれを」という順序を表す言葉で、「取り急ぎ」より急いでいる印象が弱いため、目上の相手にも使いやすい表現です。
「取り急ぎご連絡まで」の例文(同僚・社内向け)
用件が短く、相手との関係が近い場合は、そのまま使って問題ありません。
> 件名:○○の件(計画どおり進行でOKです)
>
> お疲れ様です。○○です。
> 先ほどはメールありがとうございました。
> その件は、そのままの計画で進めてください。
> 取り急ぎご連絡まで。
> 件名:資料受領のご連絡
>
> お疲れ様です。○○です。
> 資料が無事に届きました。ありがとうございます。
> 取り急ぎご連絡まで。
どちらも用件がこの一通で完結しているので、後日の補足連絡は不要です。
上司・取引先向けの例文

上司への障害の第一報
> ○○部長
> お疲れ様です。○○です。
> 本日10時ごろから、○○システムにログインできない障害が発生しています。
> 影響範囲は営業部の受注入力で、現在、情報システム部が原因を調査中です。
> 12時をめどに、状況を改めてご報告いたします。
> 取り急ぎご報告いたします。
障害の第一報なので、「取り急ぎ」を使うのが自然です。発生時刻・影響範囲・次の報告時刻の3点を入れると、上司が次の判断をしやすくなります。
取引先への遅刻の連絡
> 株式会社○○ ○○様
> お世話になっております。○○の○○です。
> 電車の遅延のため、ご訪問が15分ほど遅れ、14時15分ごろの到着となる見込みです。
> 大変申し訳ございません。
> まずはご連絡申し上げます。
取引先へのお詫びを含む連絡なので、「取り急ぎ」よりも柔らかい「まずは」を使っています。到着予定時刻を具体的に書くと、相手が予定を調整しやすくなります。
取引先への日程だけの先行連絡
> 株式会社○○ ○○様
> お世話になっております。○○の○○です。
> ○○の件につきまして、本日はまず打ち合わせの日程のみご連絡いたします。
> ○月○日(○)14時より、貴社にてお願いできますでしょうか。
> 詳細は改めてご連絡いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
日程だけを先に伝える場面なので、「詳細は改めてご連絡いたします」と書き、後で補足することを明示しています。
「取り急ぎお礼まで」「取り急ぎお詫びまで」は要注意
お礼やお詫びに「取り急ぎ」を付けること自体は誤りではありません。ただし、重要なお礼や正式なお詫びでは「急いで済ませた」印象になりやすいので、目上の人や取引先には避けるのが無難です。
お礼を急いで送りたいときは、「取り急ぎ」を使わずに、次のように書きます。
> お世話になっております。○○です。
> 先ほどは○○の件で丁寧にご対応いただき、ありがとうございました。
> おかげさまで問題なく進めることができました。
> まずはメールにてお礼申し上げます。
同僚など気軽な相手であれば、「取り急ぎお礼まで」を使っても差し支えありません。
「取り急ぎ」のメールをもらったときの返信
相手から「取り急ぎご連絡まで」と送られてきた場合は、相手が急いでいることを踏まえて、短く受け取ったことを返すだけで十分です。相手が「取り急ぎ」を使ったからといって、失礼だと指摘する必要はありません。
後で詳細が来る第一報の場合
> ご連絡ありがとうございます。承知いたしました。
> 詳細のご連絡をお待ちしております。
「返信不要」と書かれている場合
返信は不要です。返したい場合は「承知いたしました」の一言だけにとどめ、相手の手を止めないようにします。
よくある質問
「取り急ぎ」と「まずは」はどう使い分けますか?
「取り急ぎ」は「急いでいるので、ひとまずこれで」という時間的な急ぎを表します。「まずは」は「最初にこれを」という順序を表す言葉で、急いでいる印象が弱いため、目上の相手にも使いやすい表現です。
「取り急ぎご報告まで」は上司に使えますか?
「まで」で止めた形は簡略な印象になるので、上司には「取り急ぎご報告いたします」と動詞まで書くのがおすすめです。社内の関係が近い上司であれば、「取り急ぎご報告まで」でも問題ない場合があります。
「取り急ぎ失礼いたします」との違いは何ですか?
「取り急ぎご連絡まで」は「急いで連絡した」ことを、「取り急ぎ失礼いたします」は「急いでいるので短いメールで失礼する」ことを断る表現として使われます。どちらも意味は近く、「失礼いたします」まで動詞で書き切る分、後者のほうが丁寧な印象になりやすいです。
「取り急ぎ」はメールの冒頭と結びのどちらに書きますか?
どちらでも使えます。冒頭なら「取り急ぎご連絡いたします」、結びなら「取り急ぎご連絡申し上げます」のように、動詞まで書くと丁寧です。
社内チャットでも「取り急ぎ」は避けたほうがよいですか?
チャットはメールより簡潔なやり取りが前提なので、同僚同士なら「取り急ぎ共有します」のように使って問題ありません。上司宛てなら、「まずは共有します」に言い換えると無難です。
まとめ
「取り急ぎご連絡まで」について、押さえておきたいのは次の4点です。
- 意味は「とりあえず急いでお知らせします」。日本語として誤りではなく、手紙文でも使われてきた表現
- 「まで」で終える簡略な結びなので、同僚には使ってよく、上司には「取り急ぎご報告いたします」と動詞まで書く
- 取引先や初めての相手には「まずはご連絡申し上げます」が無難
- 重要なお礼・お詫び、正式な通知、急ぎでない連絡には付けない
迷ったときは「急ぎか」「第一報か、短い用件で完結しているか」「相手は目上・社外か」の3つで判断し、目上・社外なら「まずはご連絡申し上げます」と書く。これで多くのビジネス場面は無難に対応できます。会社や相手によって受け止め方に差はあるので、社内で使われている書き方も参考にしてください。
参考


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