牡蠣を食べたあとに、
「なんだかお腹が痛い……」
「急に吐き気がしてきた」
「下痢が止まらないけど、もしかして牡蠣にあたった?」
となると心配になりますよね。
牡蠣を食べたあとの体調不良は、一般に「牡蠣にあたった」とひとまとめにされがちですが、
原因は一つではありません。
たとえば、
- ノロウイルス
- 腸炎ビブリオ
- 麻痺性貝毒や下痢性貝毒
- ビブリオ・バルニフィカスなど
があり、それぞれ症状や症状が出るまでの時間、注意点が異なります。
また、
「下痢だから全部出し切ればいい」
「吐いても水をどんどん飲めばいい」
という対処はおすすめできません。
まず大切なのは、
脱水を防ぐために少量ずつ水分を補給し、重い症状がある場合は医療機関を受診すること
です。
この記事では、厚生労働省や農林水産省、消費者庁などの公的情報をもとに、
- 牡蠣にあたったときに考えられる原因
- 症状が出るまでの時間
- 自宅でできる対処
- 下痢止めなどの薬の注意点
- 病院へ行った方がよい症状
- 家族へうつさないための対策
- 牡蠣による食中毒を防ぐ方法
について紹介します。
牡蠣にあたったときの症状は原因によって違う
牡蠣を食べたあとに腹痛や下痢、嘔吐などが起きたとしても、
症状だけで原因を自分で特定するのは難しい
ものです。
「牡蠣にあたった=ノロウイルス」
とも限りません。
まずは、原因ごとの目安を見てみましょう。
原因別|症状が出るまでの目安
| 原因 | 症状が出るまでの目安 | 主な症状 | 特に注意すること |
|---|---|---|---|
| ノロウイルス | 通常1~2日程度 | 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛 | 脱水・家庭内感染 |
| 腸炎ビブリオ | 6~24時間程度 | 激しい腹痛、下痢など | 時間だけで自己診断しない |
| 下痢性貝毒 | 30分~4時間程度 | 下痢、腹痛、吐き気、嘔吐 | 加熱しても毒性は弱くならない |
| 麻痺性貝毒 | 比較的早く出ることがある | 唇・顔・手足のしびれなど | 呼吸の異常などに注意 |
※発症までの時間には幅があります。食べてから症状が出るまでの時間だけで原因を特定することはできません。
ノロウイルスの場合
牡蠣などの二枚貝でよく知られているのがノロウイルスです。
農林水産省によると、ノロウイルスでは感染してから症状が現れるまで、通常1~2日程度とされています。
主な症状は、
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
などです。
発熱することもありますが、高熱になるとは限りません。
健康な人では比較的短期間で回復することが多い一方、
乳幼児・高齢者・免疫機能が低下している方などでは、特に脱水などに注意が必要
です。
ノロウイルスには特効的な抗ウイルス薬はなく、通常は水分補給などの対症療法が中心となります。
腸炎ビブリオの場合
魚介類による食中毒の原因となる細菌の一つに、腸炎ビブリオがあります。
農林水産省では、原因となる食品を食べてから、
6~24時間程度
で症状が現れると案内しています。
平均では12時間程度とされています。
主な症状は、
- 激しい腹痛
- 下痢
- 吐き気
- 嘔吐
- 発熱
などです。
ただし、
食べてから症状が出るまでの時間だけで、原因を自己判断することはできません。
下痢性貝毒の場合
牡蠣などの二枚貝は、有毒なプランクトンを食べることで、その毒を体内に蓄積することがあります。
日本で問題となる貝毒の一つが、
下痢性貝毒
です。
下痢性貝毒では、食後30分~4時間程度で症状が現れることがあります。
主な症状は、
- 下痢
- 腹痛
- 吐き気
- 嘔吐
などです。
ここで大切なのが、
貝毒は加熱しても毒性が弱くならない
ということです。
「牡蠣は火を通せば、どんな食中毒でも防げる」
というわけではありません。
麻痺性貝毒の場合
もう一つ、日本で注意されているのが麻痺性貝毒です。
麻痺性貝毒では、食後比較的早い段階から、
- 唇や顔などのしびれ
- 手足のしびれ
- めまい
- 吐き気
などが現れることがあります。
重症の場合には呼吸に関わる症状が現れることもあります。
牡蠣を食べたあとに、
しびれや呼吸の異常などがある場合は、自宅で様子を見続けないでください。
牡蠣にあたったかも?自宅でできる対処法
腹痛や下痢、嘔吐があると、
「早く全部出してしまった方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、
下痢や嘔吐を意図的に増やして、原因となるものを体から出そうとする必要はありません。
大切なのは、嘔吐や下痢によって失われた水分や電解質を補い、
脱水を防ぐこと
です。
症状が強い場合は、無理に自宅だけで様子を見続けないようにしましょう。
水分は少しずつ飲む
嘔吐や下痢があるときに、一度にたくさん飲むと、また吐いてしまうことがあります。
そのため、
一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに
水分を取ります。
下痢や嘔吐によって脱水がみられる場合には、経口補水液を利用する方法もあります。
経口補水液は、
感染性胃腸炎などによる下痢・嘔吐に伴う脱水時に、水分と電解質を補給するための病者用食品
です。
普段の水分補給として大量に飲むものではありません。
また、
医師からナトリウム・カリウム・水分などの摂取制限を指示されている方や、乳幼児など使用方法に迷う場合は、医師・薬剤師などへ相談してください。
少量ずつ試しても水分を保てないほど嘔吐する場合は、医療機関へ相談しましょう。
食べられないときは無理をしない
吐き気や腹痛が強いときに、無理に食事を取る必要はありません。
水分が取れるようになり、食欲が戻ってきたら、
体調を見ながら、消化の負担が少ない食事を少量から
始めます。
「ヨーグルトを食べれば治る」
など、特定の食品を治療目的で無理に食べる必要はありません。
牡蠣にあたったとき下痢止めを飲んでもいい?
下痢が続くと、
「とにかく薬で止めたい!」
と思いますよね。
でも、
食中毒が疑われる場合は、自己判断で下痢止めを使用しない方がよいことがあります。
厚生労働省では、ノロウイルスについて、
止瀉薬、いわゆる下痢止めは、病気の回復を遅らせることがあるため、使用しないことが望ましい
と案内しています。
ただし、
「市販薬は全部ダメ」という意味ではありません。
また、
整腸剤と下痢止めは同じ薬ではありません。
薬を使いたい場合や、普段飲んでいる薬がある場合は、
医師や薬剤師へ相談してください。
牡蠣にあたったら病院へ行った方がいい症状は?
軽い症状で水分を取れている場合には、自宅で経過を見るケースもあります。
ただし、次のような症状がある場合は、
早めに医療機関へ相談してください。
- 少量の水分を飲んでもすぐ吐いてしまう
- 尿が極端に少ない、長時間出ていない
- 口の中が強く乾く
- ぐったりしている
- 血便が出る
- 強い腹痛が続く
- 高い熱が続く
- 唇・顔・手足などにしびれがある
また、
呼吸が苦しい、意識が明らかにおかしい、急速に症状が悪化している
といった場合は、緊急性が高い可能性があります。
このような場合は、
救急要請も含めて速やかな対応を検討してください。
判断に迷う場合は、お住まいの地域で利用できる救急相談窓口なども活用してください。
乳幼児、高齢者、免疫機能が低下している方、妊娠中の方、基礎疾患がある方などで心配な症状がある場合も、早めに医療機関へ相談しましょう。
肝臓の病気などがある人は特に注意
生や加熱不十分な魚介類では、
ビブリオ・バルニフィカス
という細菌にも注意が必要です。
農林水産省では、
- 肝臓の病気がある人
- 免疫機能が低下している人
- 鉄剤による治療を受けるような貧血がある人
などでは、感染すると重症化することがあるとして注意を呼びかけています。
該当する方が生や加熱不足の牡蠣を食べたあとに体調を崩した場合は、
早めに医療機関へ相談し、「牡蠣などの魚介類を食べた」ことも伝えてください。
ノロウイルスが疑われるときは家族への感染にも注意
ノロウイルスの場合、
本人の症状だけでなく、家族など周囲への感染を防ぐこと
も大切です。
特に嘔吐物や便にはウイルスが含まれることがあります。
嘔吐や下痢などの症状がある間は、
無理な出勤や登校を避け、学校や勤務先のルールも確認してください。
また、食品を扱う作業も避けましょう。
手洗いをしっかりする
ノロウイルス対策では、
石けんと流水による手洗い
が重要です。
トイレのあとや、嘔吐物・便を処理したあと、食事を作る前などには、しっかり手を洗いましょう。
消毒用エタノールは、
石けんと流水による手洗いの代わりになるものではありません。
手洗いできない場合などの補助として使用する考え方になります。
嘔吐物や便の処理にも注意
嘔吐物や便を処理するときは、
- 使い捨ての手袋
- マスク
などを使用し、直接触れないようにします。
汚染された場所の消毒には、次亜塩素酸ナトリウムなどが使われます。
ただし、
家庭用の塩素系漂白剤は製品によって濃度が異なります。
自己流で濃度を決めず、厚生労働省などの処理方法と製品表示に従って使用してください。
また、
塩素系漂白剤を酸性タイプの洗剤など、ほかの洗剤と混ぜないでください。
有害なガスが発生するおそれがあります。
牡蠣は加熱すれば絶対に安全?
牡蠣による食中毒対策として、
「しっかり加熱しましょう」
とよく言われます。
これはノロウイルスなどの対策として重要ですが、
「加熱すればどんな原因でも100%安全」という意味ではありません。
ノロウイルス汚染のおそれがある二枚貝について、厚生労働省では、
中心部を85~90℃で90秒以上加熱することが望ましい
としています。
ただし、
麻痺性貝毒や下痢性貝毒などの貝毒は熱に強く、加熱しても毒性は弱くなりません。
そのため、
「火を通せば貝毒までなくなる」
というわけではありません。
市販されている貝類については、産地などで貝毒の監視や出荷規制が行われています。
「生食用」なら絶対にあたらない?
「生食用」と書いてある牡蠣を見ると、
「これなら絶対に安全なんだ」
と思ってしまいそうですよね。
生食用牡蠣は、
食品衛生法に基づく採取海域や加工などの基準を満たした、生食向けの牡蠣
です。
ただし、
「生食用=絶対に食中毒にならない」という意味ではありません。
生で牡蠣を食べる場合は、
必ず「生食用」と表示されたものを選びます。
一方、
「加熱用」と表示された牡蠣は、生では食べず十分に加熱してください。
「新鮮そうだから加熱用でも生で大丈夫」
という判断はしないようにしましょう。
また、体調が悪いときや、重症化しやすい持病などがある場合は、生食を避けることも大切です。
牡蠣を食べて体調を崩したときによくある質問
牡蠣を食べて何時間後に症状が出る?
原因によって異なります。
ノロウイルスでは通常1~2日程度、腸炎ビブリオでは6~24時間程度、下痢性貝毒では30分~4時間程度で症状が出ることがあります。
ただし、
症状が出た時間だけで原因を自己判断することはできません。
下痢は全部出した方が早く治る?
「たくさん下痢を出せば原因が体外へ出て早く治る」と考える必要はありません。
下痢や嘔吐が続くと脱水の危険があります。
大切なのは、
少量ずつ水分を補給して脱水を防ぐこと
です。
水を飲んでも吐いてしまう場合は?
無理に大量の水を飲まないでください。
少量ずつ試しても水分を保てないほど嘔吐する場合は、
医療機関へ相談してください。
下痢止めを飲んでもいい?
食中毒が疑われる場合は自己判断で使用せず、医師・薬剤師へ相談してください。
厚生労働省では、ノロウイルスについて止瀉薬は回復を遅らせる可能性があるため、使用しないことが望ましいとしています。
整腸剤も飲んではいけない?
整腸剤と下痢止めは同じものではありません。
すべての市販薬を一律に「飲んではいけない」とすることはできません。
症状が強い場合や薬を使いたい場合は、医師や薬剤師へ相談してください。
経口補水液は誰でも飲んでいい?
経口補水液は、下痢や嘔吐による脱水時に水分と電解質を補うための病者用食品です。
日常的な水分補給として大量に飲むものではありません。
医師からナトリウム・カリウム・水分などの摂取制限を指示されている方や、乳幼児など使用方法に迷う場合は、医師や薬剤師などへ相談してください。
牡蠣を加熱すれば食中毒を防げる?
ノロウイルス対策では十分な加熱が有効です。
ただし、
貝毒は加熱しても毒性が弱くならない
ため、加熱ですべての原因を防げるわけではありません。
生食用ならあたらない?
生食用牡蠣は、生食向けの衛生基準を満たしたものですが、食中毒のリスクがゼロになるわけではありません。
生で食べる場合は必ず「生食用」の表示を確認し、「加熱用」は十分に加熱してください。
まとめ
牡蠣を食べたあとに嘔吐や下痢、腹痛などが起きると、
「牡蠣にあたった!」
と思いますよね。
ただし、原因は一つではありません。
- ノロウイルス
- 腸炎ビブリオ
- 麻痺性貝毒
- 下痢性貝毒
- ビブリオ・バルニフィカスなど
によって、症状や注意点が異なります。
体調を崩したときは、
下痢や嘔吐を無理に促すのではなく、少量ずつ水分を補給して脱水を防ぐこと
が大切です。
また、食中毒が疑われるときは、自己判断で下痢止めを使わず、必要に応じて医師や薬剤師へ相談してください。
特に、
水分を保てないほど吐く、尿が極端に少ない、血便、強い腹痛、高熱、しびれなどがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
そして、
呼吸困難や意識の異常、急速な悪化がある場合は、救急要請も含めて速やかな対応を検討してください。
予防については、
ノロウイルス対策として十分な加熱は有効ですが、貝毒は加熱しても無毒化できません。
また、生で食べるなら「生食用」の表示を確認し、「加熱用」は十分に加熱してください。
「牡蠣にあたった」と一括りにせず、
原因によって症状や対処法が違う
ことを覚えておきたいですね。
参考情報
この記事は、厚生労働省・農林水産省・消費者庁などの公的情報を確認して作成しています。


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