冬になると乾燥した冷たい北風が吹き始め、
温かい鍋が恋しくなってくると流行りだすのが、
ウイルス性胃腸炎です。
中でもウイルス性胃腸炎の原因としてよく知られているのが、
「ノロウイルス」です。
ニュースなどで集団食中毒の原因として「ノロウイルス」が、
大きく取り上げられることが多いので特に有名になりましたが、
他にもいくつかウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスが
あるのをご存知でしょうか?
そこで今回は、冬場に多く発生しやすい
「ウイルス性胃腸炎」の原因となるウイルスの種類や特徴、
感染してしまった時の対策などをまとめてみましたので、
参考にしてみて下さい。
症状、潜伏期間は?
まず、ウイルス性胃腸炎を引き起こす原因となるウイルスには、
主に乳幼児に感染する「ロタウイルス」「アデノウイルス」と、
主に成人に感染する「ノロウイルス」が挙げられます。
それぞれの特徴をあげてみます。
ロタウイルス
感染対象 : 乳幼児
感染力 : 強い
流行時期 : 冬~春
感染経路 : 食物、水、糞便
潜伏期間 : 1日~3日
症状 : 嘔吐、下痢、腹痛、発熱、脱水
回復日数 : 約3日~7日
主な感染場所 : 院内感染
アデノウイルス
感染対象 : 乳幼児
感染力 : 強い
流行時期 : 通年
感染経路 : 主に糞便
潜伏期間 : 7日~8日
症状 : 嘔吐、下痢、腹痛、脱水
回復日数 : 約8日~12日
主な感染場所 : 乳児院など
ノロウイルス
感染対象 : 主に成人
感染力 : 強い
流行時期 : 秋~冬
感染経路 : カキや二枚貝の生食、水、糞便
潜伏期間 : 18時間~48時間
症状 : 嘔吐、下痢、腹痛、脱水、悪心など
回復日数 : 約1日~3日
主な感染場所 : 外食、仕出し弁当など
以上のように「ロタウイルス」と「アデノウイルス」
につきましては、感染対象が乳幼児で院内感染などの
ケースが殆どのようですが、
「ノロウイルス」の場合は乳幼児や成人を問わず、
外食などで保菌者が調理に携わる事によって作られた
料理を食べて感染したり、
ノロウイルスに汚染された生牡蠣やあさりなどの2枚貝を
殺菌が不十分な状態で食べる事によって感染するケースが
目立ちます。
ただし、最近ではカキやあさりなどの2枚貝を
食べたことが原因となった「ノロウイルス」による
食中毒の件数は減少していて、
2枚貝が海水中の「ノロウイルス」を体内に蓄積、
濃縮するというメカニズムは未だに証明されていません。
疫学的な見解では、食材への直接的・間接的な
原因のはっきりしないウイルスの接触による
感染経路が殆どであると考えられています。
感染力は大きい? 感染源はどこから?
胃腸炎を発症するウイルスの感染力は強く、
特に「ノロウイルス」の感染力は非常に強いとされ、
ほんの僅かなウイルスが身体の中に入るだけで感染します。
ウイルス性胃腸炎の主な感染経路についてですが、
ここでは一般に一番多く感染しやすい「ノロウイルス」
について解説します。
1) 経口感染
何かの原因でノロウイルスに汚染された飲料水や
食べ物を知らずに食べてしまって発症するケースです。
特に生カキやあさりなどの
2枚貝を食べて発症することはよく知られていますが、
生食以外でもよく火の通っていないカキやアサリなどの
2枚貝を内臓ごと食べる事が原因の場合もありますし、
また調理に携わる人や配膳者が何らかの原因で
ノロウイルスに汚染された手で食材を扱うことによって、
生野菜サラダやパンなどの魚貝類とは無関係な食材による
ウイルス性胃腸炎の集団食中毒も報告されています。
ただし、前にも書いたように最近ではカキやあさりなどの
2枚貝を食べたことが原因となった「ノロウイルス」による
食中毒の件数は減少していて、
2枚貝が海水中の「ノロウイルス」を体内に蓄積、濃縮するという
メカニズムは未だに証明されていないのが現状です。
2)接触感染・飛沫感染
まず接触感染についてですが、文字通り何らかの原因で
ノロウイルスに汚染された手指、衣服、物品等を
触ることによって感染する場合をいいます。
この場合もノロウイルスに汚染された物品に触るだけでは
感染することは無く、
最終的には汚染された手指や物品を舐めるなどして、
口から体内にノロウイルスを取り入れることにより感染します。
次に飛沫感染ですが、
近くにいたノロウイルスに感染している人の
嘔吐物や下痢便などが床などに飛び散り、
ノロウイルスを含んだ飛沫を吸い込むことによって
感染する場合をいいます。
この時に飛び散ったノロウイルスを含む小さな水滴は、
1~2m程度飛散しますので、直接口に入らなかった
としても衣服などに付着している可能性もありますので
注意が必要です。
[warning]また嘔吐物や下痢便を誤った処理をした場合にも、
ノロウイルスを含んだ飛沫は発生しますので、
嘔吐物や下痢便の処理は正しく行う事が必要です。[/warning]
また、嘔吐物や下痢便が放置されていたり、
目には見えないノロウイルスを含んだ飛沫の処理の仕方が
誤っている場合に、
ウイルスを含んだ嘔吐物や下痢便のかけらが乾燥し、
ほこりなどと一緒に風に乗って舞い上がり、
そばを通った人が吸い込んだり、その人の衣服などに付着して、
最終的には口の中から体内にウイルスが入り込むことによって
感染する場合がありますので、嘔吐物や下痢便の処理には
注意が必要です。
ウイルス性胃腸炎に感染した時の食事はどうする?
もし、ウイルス性胃腸炎に感染してしまった場合は、
吐き気や嘔吐、腹痛などの症状がある場合は
無理に食事を摂る必要はありませんが、
脱水症状を防ぐ為に水分補給は必ずして下さい。
その際の水分補給には体内の電解質(塩分やカリウム)や
ミネラル分のバランスのくずれの予防のためにスポーツドリンク
などを少量ずつこまめに補給することが望ましいです。
なお、この時に補給するドリンクは冷蔵庫などで冷やさずに、
なるべく胃腸に刺激を与えないように常温の物を飲むように
して下さい。
また飲めずに吐いてしまう時には、病院などで点滴による
水分補給も考慮しましょう。
ちなみに、オレンジやグレープフルーツなどのジュース類や
炭酸飲料、コーヒーなどは胃に対する刺激が強く、
牛乳やミルクなどの乳製品は消化が悪いため避けた方が無難です。
腹痛が改善し、下痢や吐き気などの症状が落ち着いてきたら、
おもゆや野菜スープ、すりおろしリンゴなどから食事を始め、
消化の良いおかゆやうどん、豆腐などが望まれますが、
子供などの場合はヨーグルトやプリンなどから初めて
みても良いでしょう。
1回あたりの食事量は少なめか、食べられる範囲の量にして、
1日食事の回数を5~6回に分けるようにして下さい。
また食材は細かく切って、よく煮込んでやわらかくして、
胃や腸になるべく負担を掛けないようにしましょう。
[warning]さらに脂肪分の多い食事やスナック菓子などのお菓子類、
ゴボウなどの繊維質を多く含む野菜、キノコ、こんにゃく、
海草などは下痢を起こしやすいので避けて下さい。
また、ニラやニンニクなどの刺激の強い野菜や
香辛料などは腸管壁に刺激を与えますので避けて下さい。
[/warning]
もちろん、ビールやウイスキー、焼酎などのアルコール類も
胃腸に刺激を与えると共に、脱水を助長するので避けましょう。
なお、下痢が激しい場合に下痢止めを飲もうとする方も
いると思いますが、
感染初期の段階では、ウイルスを排泄させた方が良いとの考えから、使用しない方が良い場合がありますので、
症状が重い場合は必ず医師に相談して下さい。
ウイルス性胃腸炎の予防法は?
基本となる予防策は「正しい石けんでの手洗い」を
徹底することです。
外出から帰ってきたり、トイレのあとは、
石けんを良く泡立て、手指、できれば手首までを
しっかり洗ってください。
石けんの泡により手の油分を落とすことにより、
ウイルスも落ちやすくなりますので、しっかり手洗いをして下さい。
また、カキやアサリ、シジミ、ハマグリなど
ノロウイルスによる食中毒を起こす可能性があるものを
食べる時には、85度で一分間以上の加熱をすれば
ウイルスの感染性はなくなるとされています。
まとめ
ウイルス性胃腸炎の主な感染経路は接触感染や飛沫感染
なども考えられますが、結局のところはどちらにせよ
何らかの方法で口からウイルスが体内に侵入して症状を
引き起こすことから「経口感染」であると言えると思います。
このウイルス性胃腸炎の予防には、
正しい手洗いを徹底することが基本となりますが、
万一感染してしまった場合の治療には、
現在抗ウイルス剤はないので、腹痛、嘔気、下痢、発熱などの
症状を軽減したりする対症療法が主体となります。
これは、ウイルスが異なっていても同じで、
嘔吐、下痢による脱水を防止するためには
十分な水分を補充することが大切です。
しかし、脱水や全身倦怠が強いときは、
病院などで点滴による水分補給も考慮して下さい。
なお、嘔吐物や下痢便などの処理をする場合は、
正しい方法で行い二次感染をしないように注意しましょう。
なお、便中には1~2週間もウイルスの排泄が続く場合も
ありますので、症状が治まったとしても1週間程度は
0.02%の次亜塩素消毒液などでトイレを消毒したり、
トイレ後の手洗いを徹底するようにして下さい。
冬場は空気が乾燥して、ウイルスが空気中に浮遊しやすい季節
であると共に、寒さによって身体の免疫力の低下などが起こり
やすい季節でもありますので、
きちんとした食事での栄養補給としっかりした睡眠で
体力の低下を防ぎ、手洗いや部屋の加湿などをして、
体内にウイルスが侵入しないように心がけましょう。
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